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今年はリーガルテック普及元年となるか?

08 Apr 10:00 by ダミアン アーサー

legal technology seminar

リーガルテック とは​

法務分野でITやAIを活用し効率化を行う「リーガルテック」。​

金融分野の「フィンテック」に続き、いよいよ法務分野にも波及しようとしています。

 

すでにリーガルテックが広く活用されている米国。なぜ、これほど普及したのでしょうか?​

リーガルテックが米国で普及した背景として、訴訟大国であることやディスカバリー(証拠開示)という独自の司法制度があります。​

ディスカバリーは、民事訴訟の公判手続きにおいて、原告と被告が訴訟に関連した証拠を収集し開示する制度で、訴訟相手の求める文書の提出が必要となります。eディスカバリー(電子証拠開示手続き)により、契約書や報告書のみならず、メールなどの膨大な量のデジタル文書の精査が必要になり、リーガルテックが普及しました。

 

リーガルテック普及元年

日本でリーガルテックの普及がなかなか進まないのはなぜでしょうか?​

日本では、裁判など紙による手続きが多く、弁護士や企業法務の担当者は、紙ベースの煩雑な手続きや審査に追われており、リーガルテックが導入されにくい環境といわれてきました。​

また、リーガルテックへの関心は高いものの、セキュリティや信頼性の懸念などから導入に消極的になっている大手法律事務所もあるようです。​

 

アナログな環境が一気に変わる動きとして、行政手続きを電子申請へ統一する「デジタルファースト法案」が、3/15に閣議決定されました。​

国が主導する基盤整備により、裁判所やそれを利用する弁護士および企業に関連する法律サービスがIT化されていくのではないかと想定されます。​

その意味で、2019年は、リーガルテックが一気に普及する元年と言っても過言ではありません。

 

第一線で活躍するパネリストによるディスカッション​

リーガルテックへの関心が高まるなか、スペシャライズドグループは、3月12日(火)に第1回目となる「ソートリーダーシップ セミナー」をトムソン・ロイター株式会社と共催しました。​
​「ソートリーダーシップ セミナー」は、各分野のブレイクスルーや課題を様々な立場のキーパーソンと議論し意見を交換するプラットフォームとして、新たに立ち上げたものです。

 

第1回目は、リーガルテックへの深い見識をもつトムソン・ロイターと共に、グローバルで活躍する法務分野のキーパーソン4名を迎え、リーガルテックの米国におけるトレンドや日本での今後の展開などに関して有意義なディスカッションをしました。​

 

パネリスト(アルファベット順)

 

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社 Chief Corporate Officer 岡本杏莉氏

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社
Chief Corporate Officer
岡本
杏莉

 

 

 

 

InternetBar.org 電子身分証明書事業 ディレクター クリスチー​ナ・ヤスダ氏

InternetBar.org 電子身分証明書事業
ディレクター
クリスチー​ナ・ヤスダ氏

 

 

 

 

スクワイヤ外国法共同事業法律事務所 パートナー スコット・ウォーレン氏

スクワイヤ外国法共同事業法律事務所
パートナー
スコット・ウォーレン氏

 

 

 

 

クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所​  パートナー  トニー・アンドリオティス氏

クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所​ 
パートナー 
トニー・アンドリオティス氏

 

 

 


司会

トムソン・ロイター株式会社 法務ソリューションスペシャリスト トレイシー・グリーンウッド

トムソン・ロイター株式会社
法務ソリューションスペシャリスト
トレイシー・グリーンウッド​

 

 

 

 

スペシャライズドグループ株式会社 法務&コンプライアンス チームリーダー ダミアン・アーサー

 

スペシャライズドグループ株式会社
法務&コンプライアンス チームリーダー
ダミアン・アーサー

 

 

 

セミナーには、様々な「フォーチュン500」企業の法務やコンプライアンスの担当者や弁護士が参加し、リーガルテックにまつわる多様な意見にふれました。

 

パネリストは、各々の経験をもとに、具体的なリーガルテックの内容や課題を紹介しました。 (以下)​

 

リーガルリサーチ

必要な関連法令や判例などの膨大な量のデジタル文書の審査は、人が処理できるレベルを超えており、テクノロジーの導入が求められています。

 

法的サービスへのアクセス

戸籍を持たない日本の子どもや、海外において政府機関に登録されていない難民や孤児への対応が必要となっています。

 

課金モデル 

テクノロジーで透明性が向上することにより、クライアントの所得に応じた課金モデルへの移行が数年以内に進むと言われています。

 

スマートマシーン

ドキュメントのレビューに予測できるコードを利用することで、人が分類するルールをAIが学習し、さらにレビューの品質が向上します。

 

タイムチャージ方式

従来は、社内のリソースと外注先が連携し、データを審査していましたが、タイムチャージ方式により、企業が訴訟を断念せざるを得ないほどコストがかかっていました。リーガルテック による作業の効率化により、コストの削減が可能となり、企業は訴訟を進めることができるようになりました。

 

ODR(Online Dispute Resolution)

ODRは、家庭裁判所の手続きにおいて当事者間の係争を解決するためのテクノロジーです。 離婚や子どもの親権の係争は、当事者同士が感情的になる傾向がありますが、協議の80%がオンラインで行われるため、革新的な方法により適切な法的手続きをします。

 

サイバーセキュリティ

M&Aにおいて、組織の部外者が未公開情報にアクセスし、その情報を活用して、不当な利益を得るケースがあります。あらゆる企業や法律事務所は、リスク回避のため社内の情報を保護する必要があります。

 

透明性

テクノロジーが透明性を向上させる例として、全米の裁判所の資料が検索できるWebサイトのPACER(Public Access to Court Electronic Records)があります。

 

テクノロジーの自己規制

米国では、テクノロジーが法律よりも世の中の変革を促しており、ソーシャルメディアを提供する大手企業は自己規制をしています。企業弁護士は率先して、状況を判断しながら議論をリードし、より透明性を高めていくことが求められています。

 

クラウド

クラウドを導入するにあたり、セキュリティやプライバシーが重要となります。多くの法律事務所では、社内でIT部門を抱えていますが、法務とテクノロジーの活用に大きな隔たりがあるのが現状です。​

 

 

 

 

 

リーガルテックがもたらすインパクト​

リーガルテックは、どのようなブレイクスルーやインパクトをもたらすのでしょうか?
パネリストは、リーガルテックに対して肯定的であり、多くの時間をかけて数千もの訴訟の審査にかけていた作業が効率化され、より重要な仕事に注力できるとの見解を示していました。また、定型化され反復を必要とする分野においては、AIを有効活用でき、さらに効率化をすることが可能となるとの見方をしていました。

パネリストは、リーガルテックがもたらすインパクトに対して、このように述べていました。

 

InternetBar.org  電子身分証明書事業 ディレクター
クリスチーナ・ヤスダ氏

「法の役割を拡げ、再定義するのにリーガルテックが役立つと思います。今まで司法との関わりは法廷を意味していましたが、現在はリーガルテックでアプローチできる人数が増えることで、チャンスが拡がることを意味します。」

 

スクワイヤ外国法共同事業法律事務所 パートナー
スコット・ウォーレン氏

「AIは良いですか、それとも悪いですか?など、様々な意見があります。テクノロジーの進化を止めることはできませんが、AIはこれからも社会においてさらなる役割を担うようになり、リーガルテックもいくつかの役割を担うことになるでしょう。私たちは、人間にしかできない推進力をつけて、法的な問題解決に向けて挑戦していく必要があるでしょう。」

 

クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所​ パートナー
​トニー・アンドリオティス氏​

「 リーガルテックがタイムチャージ方式を変えていくのは素晴らしいことです。大手法律事務所がタイムチャージ方式を今でも取り入れていることに驚くとともに、弁護士にとっての悩みの種でもあります。請求額を抑えるよりも、より高い金額にすることに注力しており、リーガルテックがこれを変えていくことサポートするでしょう。」

 

質疑応答セッションで、参加した方々は、マシーンラーニングが最も活用される分野や今後の弁護士のあり方、タイムチャージ方式の課金モデルの変化に大きな関心を寄せ、パネリストと活発に意見を交わしました。

 

参加した方々からは、以下のようなコメントをいただきました。

「弁護士の役割は、人々を助けることだと改めて感じ、登壇者の情熱に大変感銘を受けました。」

「リーガルテックに関して、様々な立場の意見を学ぶ機会をいただき、大変勉強になりました。」

 

弁護士の働き方改革

リーガルテックが一気に普及する元年となりそうな2019年。
その恩恵を受けることで、弁護士が経験やクリエイティブ性を求められる仕事に注力できるなど、働き方が変化していくことでしょう。