いまや上場企業に入社した大卒新人の30%が3年以内に就職した会社を辞めてしまうという。一部のメガバンクではすでに35%に達しており、今年はその比率が40%に達するとの試算もある。簡単には就職できない上場企業に入社して、わずか3年でやめてしまうのはなぜか。
いまや上場企業に入社した大卒新人の30%が3年以内に就職した会社を辞めてしまうという。一部のメガバンクではすでに35%に達しており、今年はその比率が40%に達するとの試算もある。簡単には就職できない上場企業に入社して、わずか3年でやめてしまうのはなぜか。
その理由の一つは、成果主義という名のもとに導入された若年層の給与が上がりにくい賃金体系にある。日本の大企業は1991年のバブル崩壊後、賃金カットや人員削減を行う代わりに、90年代後半になって成果主義を導入した。
これは一見、個々人ががんばれば報われる賃金制度のように見える。しかし、実際に企業の多くが導入した成果主義は、団塊の世代(1947~49年生まれ)以上のシニア層の賃金カーブをいじらずに、若年層の給与を上がりにくくすることで、人件費の総額を増やさない、もしくは減らすという若年層にとっては実質的な賃金カットを導入した。
98~2001年春卒の就職氷河期に就職した若年層の多くは、自分の上司にあたるシニア層と自分たちの世代で生涯賃金に大きな差がつくことに気づきはじめたわけだ。
さらに新卒採用を抑制したり、新規の投資を行わなかったことで、いつまでたっても自分の部下や後輩になる世代が入社せず、90年代後半以降に入社した世代には、「いつまで使い走りのような仕事をさせられるのか」という不満が募り始めた。また、98年の金融危機以降、上場企業に就職する大卒新人の多くは、目的意識やキャリア志向が高く、「いま自分が行っている仕事は将来どのようなキャリアに結びつくのか」、「この会社、業界にはどの程度、将来性があるのか」、「会社は私をどれだけ育成する気があるのか」という厳しい目で会社を見るようになっている。
こうした世代にとって、「生涯賃金という形でシニア層に厚い賃金体系になっている」、「既得権益(シニア層の高給)を守り、若年層に報いてくれない」、「若年層にチャンスを与えようとしない」、「教育・研修制度が未整備」と感じる企業ほど、若年層の離職が高くなる傾向がある。これが若者がわずか3年で会社を辞めてしまう大きな理由と思われる。
かつては「石の上にも3年」という言葉が日本でも通用した時代があったが、転職の情報があふれ、転職によってキャリアアップすることが多い時代には、この言葉はもはや通用しないようだ。
実は企業もこのことに気づき始めており、今年は銀行やメーカーなどが優秀な人材確保に向け、10数年ぶりに初任給を引き上げはじめている。しかし、単に大卒新人の初任給を引き上げるだけでは若年層の高い離職率を引き上げることはできないだろう。
入社後に、キャリアアップのためにどれだけ教育や研修を行い、実際のビジネスの上でどうチャンスを与えるか、出した結果に対して正統な対価を与えるか、という点で若年層が納得していくような雇用・人事体系、教育・研修制度を整備していかない限り、高止まりする若年層の離職率を引き下げることは難しいだろう。