実際、あるシンクタンクによると、働く女性に優しい対策を導入している企業と、そうでない企業の過去5年間の生産性を比較した場合、働く女性に優しい企業ほど生産性が高まり、離職率も低いという傾向が見られたという。
1986年の男女雇用機会均等法施行以来、雇用者に占める女性の比率は約4割に達している。しかし、日本には欧米先進国や一部のアジア諸国に見られないM字型曲線という独特の年齢別女子就業率パターンが見られる。これは30~40代の子育て時期に女性の就業率が低くなる現象を示すものだ。
このM字型曲線は、グローバル競争が激化する一方、少子高齢化で労働力人口が減少していく日本にあっては、決して好ましいものではまし。むしろ現在の日本にとって、女性の就労率と就労意欲を高めることこそが日本経済全体の大きな課題といえる。日本の企業はこのことに気づきはじめており、近年は大手企業を中心に、働く女性(ワーキングウーマン)を支援する様々な対策を打ち出している。
たとえば大手電機メーカーでは、最長7年、育児に専念できる制度を導入している。このほかにも社内に託児所を設けたり、育児休暇後の職場支援を復帰するためのサービスなど、育児休暇中のキャリアロスがないよう配慮する企業も増えている。女性の採用拡大や一般職から総合職への転職などに積極的な企業も増え始めた。
実はこうした取り組みは、世界的な雇用慣習のトレンドの一つであるダイバーシティー(多様性)の一環でもある。ダイバーシティとは、性別や学歴、年齢などによる差別をなくし、多様な価値観を持つ人材が活躍できる職場環境を作ること。結果的にダイバーシティの導入が働く人の就労意欲を高め、企業の生産性を向上させることになるのである。
実際、あるシンクタンクによると、働く女性に優しい対策を導入している企業と、そうでない企業の過去5年間の生産性を比較した場合、働く女性に優しい企業ほど生産性が高まり、離職率も低いという傾向が見られたという。
働く女性に優しい、ということは「働く人を大事にする企業」ということを全社的にアナウンスすることにほかならず、結果的に会社に対する忠誠心が高まり、仕事に集中し、専念することができるからである。実際、育児休暇後の職場復帰に積極的なある化粧品メーカーの男性は「私は女性ではないが、ここまで働く女性に安心して働ける制度が整備されていると、男性としても安心して働くことができる」という。
ただ、問題はこうしたワーキングウーマン向けの支援が充実しているのはまだ一部の大企業に限られていることだ。日本の企業の9割以上は中小企業であり、就労者の7割が中小企業に勤めている。大企業に限らず、中小企業にも「女性が働きやすい会社こそ生産性が高まり、離職率が低くなる」ということに気づき、育児支援制度などを充実していけば、結果的にそれが日本の少子高齢化を抑止することになる、といえないだろうか。